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ニューヨーク市 中小企業テナントの為の 家賃救済対策

【NY商業不動産ウォッチング】最終回
ニューヨーク市 中小企業テナントの為の 家賃救済対策

 パンデミックが始まってからおよそ8ヶ月になる。クオモ州知事は11月11日、ニューヨーク州のコロナ感染再拡大を受けてレストラン、バー、スポーツジムの営業を午後10時で閉鎖するという規制強化を発表した。

 ニューヨーク市における中小企業のパンデミックの経済的な打撃は破壊的で、特に小売店舗とレストラン業界の多くは経営難に直面している。マーケットは下がってはいるものの、テナントが賄えるほど十分な家賃の値下がりはしていない。クオモ州知事は商業不動産テナントのレント未払いによる立ち退きを来年1月まで延長したが、政府による援助はまだ不十分である。

 今回は、商業不動産テナントの家賃支払い対策について考えてみた。

 家主からレント未納よる立ち退きを強いられる前にテナントから積極的に連絡を取ることをお勧めする。

どのように家主と交渉を進めるべきか?

 多くの家主はモゲージを抱えていて、不動産固定資産税も支払う責任がある。ニューヨークの固定資産税があまりにも高い為に、家主としてもあまり家賃を安くできないのが現状である。テナントの家賃滞納は家主にとっても痛手であり家主、テナントの両者がパンデミックの被害者として協力体制で臨むことが必要である。

 家主にとって訴訟に持っていけば時間とお金がかかるし、新しいテナントを見つけるのも大変なことで、できたらテナントに出て行って欲しくはない。

 高姿勢で交渉に挑むのでなく正直に、オープンに、率直に話し合いをすることが良い解決策への鍵となる。弁護士や会計士のアドバイスを得ることも大切である。

交渉の進め方

 まず家主に連絡を取る前に、事業の決算書を用意する。収支と支出を正確に把握しておく。

① リース契約のリビューをする。

② 家賃の値下げの交渉を開始する。リースのストラクチャーの変更。例えば家賃値下げをリクエストする代わりにリース期間の延長を考慮する。ある一定の販売額が出るまで月額収益の何%かを支払うのも一つの方法である。

③ 支払える金額を提示する。リース契約に定められた固定家賃を払えるまでにどのくらいの期間を必要とするか想定する事は難しいが、家主にはある程度の具体的プランを提示する必要があるであろう。例えば市内のフットトラフィックが80%まで戻ってくるとか、市内のオフィスビルのテナントの平均90%が戻ってくるとか、家主が安心し納得するプランを示すことである。リースアメンダメントの同意は口頭ではなく必ず正式な書式にて締結することも不可欠である。

積極的に援助を求めることだ。同業者と情報交換も助けになるであろう。

 NYCスモールビジネス リソース ネットワーク(SBRN)では市内の23万の中小企業を援助するネットワークを9月に立ち上げ、コマーシャルテナントの家賃の問題に関する無料の法的アドバイスを提供している。SBRNは、パンデミックで生き残る為の必要な支援へのアクセスが少ないマイノリティー、女性、移民の経営者に焦点をあて無料法的アドバイスの他にもテクノロジー、会計サービス、マーケティング、ローンや助成金の支援の情報なども提供している。

(www.nycsmallbusinessresourcenetwork.org)

 ワクチンができても短期間で経済がパンデミック前に戻る可能性は低い。多くの中小企業が経営危機にある中、クオモ州知事からの援助は不可欠であるが、大規模な連邦政府の介入が必要である。

 現時点で民主党のバイデン前副大統領が勝利を確実にしており、政権移行後の早急な連邦政府からの援助を期待したい。

 

Masubuchi Realty LLC
社長 増渕 敬子
keiko@masubuchirealty.com

《企業概況ニュース》2020年 12月号掲載