Home > Featured > 《ジェトロ・アトランタ》中南米エリアの 重要拠点としてのフロリダ
ジェトロ・アトランタ事務所
所長 高橋 卓也 さん           www.jetro.go.jp

 全世界で猛威をふるう新型コロナウイルス。北米でも、11月に入ってから再度の自宅待機勧告や飲食店の夜間営業規制発令など、経済活動再開の大きな妨げとなっている。こうした状況下、JETRO(日本貿易振興機構)では、在米日系企業に有益な情報を積極的に提供し続けている。

 これまでも全米6カ所に置かれた事務所を通じ、対日直接投資促進やスタートアップの海外支援、日本の農林水産物・食品輸出支援、中小企業の海外展開支援や調査・研究と、日本のグローバル化をしっかりサポートしてきた。コロナが活発化した3月以降は、全米の日系企業に対して5回の緊急アンケート調査を実施し、交錯するコロナ状況や、米国政府や関連機関による最新情報、それに対する日系進出企業の対応などを分かりやすくまとめて提供した。

 この緊急アンケートのきっかけとなったのが、ジェトロ・アトランタ事務所長の高橋さんだ。これに先駆けて管轄する南東部6州で行ったアンケートを元に、他の事務所に声をかけることで全米規模のアンケートが実現した。アトランタ事務所でデータを集計し、ニューヨーク事務所で全体の分析と大きな方向性を定め、ロサンゼルス事務所では細かい調査を受け持つなど、3事務所が中心となり5回に渡る有益なアンケート結果がまとめられた。

 「感染拡大を踏まえた日系企業の対応や連邦政府からの救済措置など、1週間後には状況が変わってしまう。とにかくアンケート翌日には結果をまとめてフィードバックする───ここにコミットしました」。急ごしらえで理解の難しい救済措置については、専門家を招いたウェビナーを開催した。コロナ禍で法務、労務や税務などの問題を抱える日系企業が、弁護士や会計士に個別相談できる窓口も開設した。前例のないz未曾有の状況下、こうしたジェトロの素早い対応に助けられたという経営者も多いのではないだろうか。

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 将来が見えてしまう仕事よりも、様々なことに関われるチャンスが多いとジェトロの扉を叩いた。何よりも、一企業の利益を追求するよりも、公的な立ち位置で人々をサポートする方が自らの性格に向いていると感じた。その考え通り、入社後しばらくして語学研修でスペインに滞在し、愛媛事務所赴任の際には養殖技術のオーストラリア展開支援を手掛けた。また、メキシコへの4年間の駐在時には、日本とメキシコの経済連携協定(EPA)発効の時期と重なり、多くの有益な経験を積んできた。そして、昨年1月からはジェトロ・アトランタ事務所の所長として、これまでの経験を活かしたさらなる展開に胸を踊らせている。

 今後は、南東部でこれまで支援事業を行ってきた製造業に加え、テクノロジー産業の新舞台として、そして中南米ビジネスのハブとして注目されるフロリダ、特にマイアミにも力を入れていく。中南米の投資家との繋がりを広げることで、日系企業の活躍の場が大きく広がるという。さらに、州政府や各カウンティとの関係強化が、南東部での日系企業展開には欠かせない。そのためにも、現地の関係者や商工会に認知してもらうジェトロ独自の〝グラスルーツ活動〟が続けられている。コロナの収束は未だ見えないが、その時に備えた準備が着々と進められている。

  《企業概況ニュース》2020年 12月号掲載