Home > Featured > アジア料理へのイメージを改革したい 本格的な味を家庭でも

アジア料理へのイメージを改革したい 本格的な味を家庭でも

Omsom
共同創設者 ヴァネッサ&キム・ファム さん           

 COVID19によるシャットダウンは日常生活に不便をもたらした一方で、我々に趣味に回帰する機会を与えてくれた。なかでも料理は隔離生活中、最もポピュラーなトレンドのひとつだった。多くの人が時間をかけて新しいレシピにチャレンジしているが、馴染みのないエスニック料理を作るのは簡単ではない。 アジア料理の多くは、様々な調味料、スパイス、ソースを使用しているため材料を見つけるのが難しいこともある。

 Omsomはベトナム語の“騒々しい”“勝手気ままな”という意味の言葉から名付けられた。スパイスや調味料が1つの小袋に入った製品を「スターター」と名付け、どの家庭のキッチンでも各種アジア料理を素早く簡単に調理できる。料理をする人は「スターター」パウチを破って中身を入れるだけで、使い慣れた食材を趣のあるアジア料理に変えることができる。共同創設者ヴァネッサ・ファム(Vanessa Pham)さんは、「私たちが代表するコミュニティや料理に心から敬意を表し、様々な伝統的料理のシェフと協力して製品開発しました」と語る。

 ファム姉妹はこれまで全く別の仕事をしてきた。姉のキムはロンドンのシードステージ・ベンチャーキャピタルファンドで働き、ヴァネッサは小売や成長戦略についてフォーチュン500 Consumer Packaged Goodsカンパニーのアドバイザリーをしていた。二人は一緒に起業したいと考え、 「会社を始めるのは難しいので、私たちが何よりもまず一番大切にしている使命のために起業しようと決めました。多くのビジネスは失敗するので、そのリスクを負うなら、私たちはアジアの伝統料理をとても大切にしているので、その理念が重要であるということを真に理解する必要がありました」とファムさん。

 姉妹がビジネスアイデアを出し合っていたとき、アジア料理はすぐに候補に挙がった。二人は第一世代のベトナム系アメリカ人であることから、食べ物は生活の重要な要素であるということで意見が一致した。食べ物は、アイデンティティと文化を人々と共有する手段であるだけでなく、両親から子供たちへの愛の言葉でもある。さらに、近年アジア系アメリカ人の文化が注目されていることから、これらの料理が象徴するものを再度訴えかけることを目的としたブランドを作りたいと考えた。ファムさんは「現在の消費者は、アジア各地の郷土料理を口にしている」と言う。しかし、既存の食品ブランドは料理がもつ文化的背景までを反映していないため、二人は食料品店で入手できるものに満足していない。

 Omsomは、コロナウイルスが発生するずっと前から準備をしてきたが、 製造と流通が影響を受け、立ち上げを遅らせることになった。こうした問題を解決し、現在ブランドアイデアを消費者に伝えようとしている。 「この製品が、この隔離生活中に、喜びと人とのつながりの感覚と発見をもたらすことを願っています」とファム氏は語る。この困難にも関わらず、Omsomが発表した「スターター」の最初の出荷分は72時間以内に完売した。

 「反響は期待していたよりもずっと大きかった。私たちが何をしているのか、何を目的にしているのか、そして私たちがそれに対してどれだけ意図的に取り組んでいるのか。製品だけでなく、私たちのメッセージを人々が本当に理解してくれるのを見るのは驚くべきことだ」とファムさんは語る。Omsomは現在、東南アジア系の3つの料理、ベトナム料理、タイ料理、フィリピン料理の代表的な料理の「スターター」を販売している。今後の展望は、アメリカ人の食事の仕方と現在の食料品店でのアジア料理の象徴のされ方を変えること。可能性は無限だが、チームは「スターター」に焦点を合わせている。楽しみなことに同社は現在、日本料理、韓国料理、中華料理を含む東アジアのラインに取り組んでいる。

《企業概況ニュース》2020年 6月号掲載