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【米国人事労務管理 最前線】 給与調整予算とベネフィット・ コスト

 早いもので8月も下旬に入り、夏らしい活動ができないまま、秋に突入してしまいそうです。私が拠点にしているニューヨークでは、COVID19の感染拡大は抑制されており、落ち着きを見せているように思います。 また、地域によって差はあるものの、アメリカ全体で見ると感染者数は下降傾向です。 しかしながら、アメリカ全体での死者数は下降傾向になっていないのが気になるところですし、またいつどこで感染拡大が起こるかは分かりません。予断を許さない状況が続いていることに変わりはないかもしれません。

 そのような状況の中でも、来年に向けての給与調整の検討を開始したり、医療保険等のベネフィットの更新や変更のタイミングもやってきます。そこで今回は、最新の給与調整予算と、ベネフィット・コストに関する調査結果をお伝えします。

給与調整予算に関する調査結果

 今回は「WorldatWork(ワールド・アット・ワーク)」の年次レポートを取り上げます。これは当社が毎年購入しているレポートで、今年の調査は5月下旬から6月下旬にかけて実施されたものです。 同様の調査では最大規模で今回の回答者は全世界で4,754人。継続されている調査では最も古くから続いており今回で47年目です。

 これから年末にかけてもっとも多くお問い合わせがある「来年(2021年)に向けての昇給率」はアメリカでは平均2・9%増で、2020年に向けての平均3・3%増から0・4%のマイナス。マイナスになったのは2008〜2009年の金融危機以来、12年ぶりになります。

 マイナスとは言え、現時点では多くの企業が従業員の昇給を予定しているわけですが、これは3~4%の昇給を計画している約70%の企業に引っ張られている数字で、昇給をフリーズすると回答している企業も例年に比べると多いという点は注目に値します。

 また、今後のCOVID19の状況次第では変化があるだろうということは付け加えておきます。より詳細なデータについては、当社が毎年10月から11月にかけて全米の主要都市を回って開催している恒例のセミナーでご紹介したいと考えております。(今年はオンラインでの開催になると思います。)

ベネフィット・コストに関する調査結果

 今回はNPO団体である「Benefit Group on Health」が実施した調査を取り上げます。この調査は5月から6月にかけて大企業を対象に実施され、122社が回答。この122社の従業員と家族を合計すると920万人で、78%の企業が1万人以上の従業員を雇用しているとのことです。

 2021年に向けてのコスト変動予測は中央値で5・3%増。従業員1人あたりの実際のコストは2019年から197ドル増の1万4,769ドルで、2021年には1万5,500ドルになる見込みだそうです。これからの傾向としては、COVID19の影響もあり、バーチャル・ケアやテレ・ヘルスへの支出が多くなるとともに、メンタル・ヘルスやウェル・ビーイングを含むプログラムへの内容変更も検討課題との結果が出ています。 

 経済回復のタイミングが見えない中でのコスト管理という難しい舵取りが迫られる時期ですが、今後も様々な調査結果が出てきますので、少しでも皆様のご参考になる情報を提供できればと考えております。

 人事労務管理関係でご質問等がございましたら、いつでもお気軽にお問い合わせください。

 

三ツ木良太 
HRM Partners, Inc. President and COO

《企業概況ニュース》2020年 9月号掲載