Home > Featured > 米国に食品を輸入する際の食品安全規制のポイント

 食品医薬品局(FDA)によると2019年度に米国は200以上の国または地域にある約12万5000の食品施設や農場から食品を輸入しており、米国消費者に販売する目的で米国に輸入された約1500万の食品貨物をスクリーニングしました。現在、米国内で消費される食品の約15%が輸入品で貨物数は以下のチャートのとおり年々増加傾向にあります。

 一方、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)によると食中毒や汚染された食品により病気になった人数は米国全体で4800万人に上るといわれており、食品の安全を監督するFDAは米国内の食品会社と外国の食品会社に安全要件を確実に満たすよう食品安全近代化法(FSMA)の導入を通じて規制監視を強化してきています。

 食品供給のグローバル化により、複雑なサプライチェーンや様々なビジネスモデルが存在しており2011年に導入されたFSMAは、FDAの焦点を汚染への対応から汚染の防止に移すことにより、米国の食品供給が安全であることを保証することを目的としたものです。

 輸入食品の安全性に関するFDAの目的は、海外から輸入された食品も、国内で生産された食品と同じ食品安全要件に準拠していることを確実にすることです。

国(地域別)米国への食品出荷数の推移

 FSMAの下、ヒトおよび動物向け食品生産の予防管理規則では、食品の製造業者、加工業者、包装業者、および保有者が、現行適正製造基準を確立し、サプライチェーン管理を含む予防管理を適用することを求めています。また、FSMAは、製造業者、輸入業者、第三者監査人、外国の規制機関、FDA、およびその他の関係者に異なる役割を指定し、輸入食品に関する多層なセーフティネットを作成しています。

 輸入食品の安全性を確実にするため、FDAは以下のような指針に従って手順を開発しており、FDAの輸入食品安全目標は、次の4つのカテゴリに分類されます。

① 米国への入国前に外国のサプライチェーンにおける食品安全問題を防止する。

 輸入品として提供される食品に関して、外国のサプライチェーンが米国の食品安全要件に準拠していることを確認すること。

② 国境で安全でない食品の入国を効果的に検出して拒否する。

 貨物が米国に入るすべての地点である300以上の米国の入港地でのFDAによる検査等の監視活動。

③ FDAが安全でない輸入食品の存在を知ったときの迅速な対応。

 FDAは、安全でない食品が入国した事を発見した場合に、迅速にその原因を特定し市場からリコールにより迅速に排除されるように手順とプロセスを設計している。

④ 効果的で効率的な食品輸入に関するプログラムを作成し改善していく。

 FDAの輸入食品公衆衛生ミッションの推進は、よりスマートな食品安全、質の高い労働力、統合された機敏な管理システム、および関係者とのコラボを可能にすることにかかっている。

 これを受け、具体的には日本を含む、外国の食品の製造や食品輸入に関わる会社には以下のような重要なポイントを熟知し対応する事が求められていると解釈されます。

⑴ 製造会社は原材料、ラベル、アレルゲン、包装パッケージ材、添加物、色素など各食品に係る米国適用基準を理解し確認する事。

⑵ 製造会社はCGMP(現行製造適正基準)予防管理(HARPC)サプライチェーンを整備し、実行する事。

⑶ 輸入者側は外国供給者検証プログラムを整備し、実行する事。

 日本食は米国でも非常に人気があり、魅力的な市場とみられます。弊社のお客様には、既に米国向けに食品を製造したり輸入するノウハウをかなり蓄積している会社様も、初めての会社様もいらっしゃいます。日本企業は一般的に食品製造について衛生面や質管理が優れている会社様が多いと見受けられますが米国は世界中から食品の輸入をする中で、米国独自の安全性の確立や検証方法についてのガイダンスやドキュメンテーションの義務付けに関する規制を築いていますので、その規則をよく理解して対応する事が求められています。 


《執筆者》

Managing Director ド 敏子
Eureka Global Solutions LLC  www.eureka-global.net

国際ビジネスコンサルティング会社にて食品医薬品局(FDA)、環境保護庁(EPA)、農務省(USDA)、消費庁(CPSC)、州規制関連分野を中心にManaging Directorとして10年以上活躍。食品、飲料、添加物、色素、食品接触物、医療機器、医薬品、化粧品等々の適用規制の明確化や申請、登録などの規制面クリアのサポートと、規制面クリア後の米国での成功をサポート。ジェトロのヘルスケアセクターのアドバイザーとして長年に亘り活躍。

規制関連コンサルティング以前は大手都市銀行ロスアンゼルス支店にて、Corporate Banking GroupのVice PresidentとしてFortune 500企業を中心に幅広い業種を担当し企業買収案件10年経験。米系、英系の証券会社東京支店にてシニア証券アナリストとして多岐に亘る業界や企業の分析、営業分野にて6年間の実績と経験を有する。

慶応大学経済学部卒業(公共経済専攻)、南カリフォルニア大学経営大学院卒業(MBA)

 

《企業概況ニュース》2020年 12月号掲載