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リアルで楽しめるゲーム空間を
《Kiddleton》

人々をもっと笑顔にしたい
リアルで楽しめるゲーム空間を
《Kiddleton》

今月の人

 

Kiddleton, Inc.
社長 伊与田 篤 さん
https://www.kiddleton.info/

〝世界中の人々の人生をより楽しく〟をスローガンに、世界のアミューズメント業界に新風を吹き込む企業がある。2018年に創業した株式会社GENDA(ジェンダ)だ。GENDAは中国、台湾をはじめ海外展開にも積極的に取り組み、北米市場においては株式会社ラウンドワンとの合弁会社Kiddleton(キドルトン)で、2019年10月から急速に事業を拡大している。



Kiddletonの3本柱

 Kiddletonが北米で取り組んでいる事業が3つある。1つめは、ゲームアーケードとインドアプレイグラウンドを融合させた「子供向け施設運営:キッズ事業」である。病院や警察・消防署、スーパーマーケットなどのプレイグラウンド空間で、制服に身をつつんだ子供たちがおもちゃのお金でロールプレイングを楽しむもの。現在は、テキサス州フォートワースに1万スクエアフィートの施設を有し、約10ドルの入場料で、1日中利用が可能だ。

 もう一つが、レストラン&BARにゲームセンターやボーリング施設を組み合わせた「大型複合エンターテイメント施設事業」。ナムコUSA社がシカゴで運営してきた“PAC-MAN Entertainment”を2021年4月に譲り受け、”ENTERRIUM“として新たに展開する。レストランで食事やアルコールを楽しみながらゲームに興じるスタイルは北米では一般的で、大人も楽しめるアミューズメント空間として人気を博している。イリノイ州シャンバーグにあるウッドフィールドモール内で展開中だ。

 そして3つめの事業が、「キオスク事業」となる。主にアジア系のスーパマーケットの一角を間借りした空間に、日本製クレーンゲームなどを設置し、専用コインで遊んでもらう「プライズゲーム」形態だ。景品は日本製の良質なものにこだわり、ぬいぐるみやアニメキャラクター商品を獲得しようと来場者が熱中している。3月末時点で全米14店舗を構え、今後は米系スーパーやショッピングモールも含め、さらに出店を加速していく計画だ。

グローバル基準の視点で、目標達成へ

大型複合エンターテイメント施設事業「ENTERRIUM」

 こうした北米市場展開の指揮を執る伊与田さんは、最初からアミューズメント業界に興味を持っていた訳ではないと言う。2004年に、年末年始のアルバイトを募集していた地元のイオンモールの時給が比較的高かったという理由からイオングループのアミューズメント企業であるイオンファンタジーで働きはじめ、そのまま社員となった。店長、機械メンテナンス、ゲーム機のバイヤー、商品開発などを経て、ベトナムやフィリピンの海外責任者も務め、アミューズメント施設運営のプロフェッショナルとして活躍していた時に転機が訪れた。2019年に、GENDAが北米プロジェクトを立ち上げる際に声がかかり、Kiddletonの社長として北米市場にチャレンジすることになった。

 市場規模や投資額が全く違うアメリカ市場。各種許認可の取得プロセスの複雑さやプロジェクト進行の遅延、約束に対する考え方の違いなど思わぬトラブルに直面することもあるが、アジアでのトラブルに比べれば、案じるほどでもないと笑う。「むしろグローバル基準で考えれば、日本の正確さや丁寧さの方が例外的なのだと思えるようになりました。そこを加味しながら目標を達成していく醍醐味を、今感じています」。

リアルな場所で、一緒に楽しむ喜び

 スマートフォンやオンラインゲームの台頭で、家庭でもどこでも気軽にゲームを楽しめる時代。アミューズメント施設は時代遅れという風潮も広がりつつあったが、伊与田さんが大切にしているのは〝リアルな場所〟。ゲームの形態は今後も変わっていくかもしれないが、友人や家族の顔を見ながらリアルな空間で一緒に楽しむ空気感は、皆が失いたくないと感じているし、絶対になくならないと確信する。

アメリカのエンタメ市場でトップを目指す

子供向け施設運営のキッズ事業

「この業界に身を置くということは、皆さんの人生を豊かにするためのお役に立つことだと考えています。私の目標は、一人でも多くの人を楽しませ、そして笑顔を生み出す人生を歩んでいくこと。そんなことを考えながら毎日仕事に取り組んでいます。イオングループという安定した場所から、敢えてベンチャーへ転職したのは、この役割にやりがいを感じ、何よりも新たな市場を切り拓いていく醍醐味を知っているからです。やるからには、アメリカ市場でトップクラスのエンターテイメント企業を築きたいと考えています」。

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 キディ(Kiddie)とタウン(Town)を足してキドルトン──子供の街と名付けた。シカゴのENTERRIUMという名前も伊与田さんのアイデアだ。任せられているからこそ手抜きはしないと、全てにおいて全力で関わっていこうと決めている。もちろん、このペースで拡大を続ければ、近い将来、そのやり方が通用しなくなることも分かってはいるが、信頼できるスタッフと共に、一歩ずつ自分の思い描く世界観を作り上げていく。

 「弊社1号店となるダラス・フォートワースのキッズ施設も、7月で3年目を迎えます。各事業において気づいたことや反省点を踏まえて、今後さらに洗練されたより良いものにしていきたいですね」。伊与田さんの目には、人々を笑顔にし、少しだけ人生を豊かにするための道筋が、はっきりと見えている。