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「MSポリマー」が勢力図を変える《カネカ・ノースアメリカLLC》

バランスの取れた ハイテク樹脂
「MSポリマー」が勢力図を変える《カネカ・ノースアメリカLLC》

 

 

 

バランスの取れた ハイテク樹脂「MSポリマー」が勢力図を変える

カネカ・ノースアメリカLLC
MSディビジョン・グローバルR&B

シニアディレクター/工学博士 中川 佳樹 さん

https://www.kaneka.com/kaneka-americas

 

 一般的な樹脂は、熱すると溶け出し、冷やせば固まる特性を持つ。しかし、カネカの開発した反応型ハイテク樹脂「MSポリマー」は、水あめ状の樹脂に硬化触媒を配合し、ここに空気中の水分が加わることで硬化する。主に建築現場のシーリング材や弾性接着剤の原料として、また、金属類への接着性も高く、電気電子部品や工業用接着剤としても広く利用される。開発以来40年で、日本の建築シーラント市場では40%以上のシェアを獲得。その後、ベルギー、アメリカ、マレーシアと世界4拠点での生産体制を整えグローバル展開を進めている。これまで市場を牽引してきたシリコーンやポリウレタン。このMSポリマーが、世界の勢力分布図を塗り替える。

 シリコーンは熱や油にも強い。しかし、シーラント内のシリコーンオイルがゴミを吸着しながら広がり目地周辺を汚したり、塗料が乗りにくいという欠点がある。また、ポリウレタンにも耐候性や加水分解性の欠点がある。幅広い素材に良好な接着性を有し、長期の耐久性にも優れたバランスの取れた材料「MSポリマー」への注目度が高まっている。

 例えば、モルタルが世界標準である外壁タイルの接着に、日本ではMSポリマーの使用が広がっている。実績を積み重ね、その耐久性が実証されると、MSポリマーへの信頼性はさらに高まった。また、接着力だけで言えばウレタンに軍配が上がるフローリング用接着剤においても、ウレタンのはみ出た際の拭き取りにくさや、その後のシミ跡には不満の声も多かった。MSポリマーであれば十分な接着力を保ちつつ、塗った直後は綺麗に拭き取れ、固まってからも簡単に剥がすことができる。こうした利点が一つずつ実証・理解されていくことで、MSポリマーに寄せられる期待はさらに高まり、モルタルやウレタンが未だに主流のアメリカ市場の経済規模を考えれば、MSポリマーの持つポテンシャルは非常に大きい。

 さらに「環境」というキーワードもこの動きを後押しする。世界では、溶剤を使った接着剤・シーリング剤から「無溶剤化」へという動きが進む。また、ウレタンに使われる化合物イソシアネートは毒性の懸念が広がり、規制の厳しいヨーロッパにおいては、ウレタン系接着剤購入時に手袋がセットで付いてくることが多い。サステナビリティという面においても、耐久性が高く一回施工すれば長期間ノーメンテナンスで使用できるMSポリマーは、そこで発生する人やサービスといったエネルギーを大幅に削減できるため大きな追い風となる。

 こうした好機に、カネカが取る市場開発戦略の一つが「ソリューション提案」。カネカは、あくまでもポリマーメーカーだが、MSポリマーは特殊な樹脂であり、使いこなすには高度な知識と技術が必要となる。そこで独自の配合レシピを用意し、潜在顧客のニーズに対してモデルとなる様々な配合や用途の提案を行い、カスタマイズしたソリューションの提供を進めている。

 カネカで研究所長も務めてきた中川さんは、さらに高性能な「KANEKA XMAP」の開発者でもある。カーネギーメロン大学にポスドクとして留学していた際に出会った世界初の基礎技術を日本に持ち帰り、初めて工業化させた。現在は、〝グローバルR&B〟のシニア・ディレクターとしてグローバル市場開拓の策を練っている。R&Bは、カネカ独自の役職だ。リサーチ&ディベロップメントで終わるのではない。ビジネスに繋げて初めてリサーチが活きるという考えだ。アメリカの建築市場に、MSポリマーの大旋風が起きようとしている。

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《企業概況ニュース9月号 vol.272掲載》

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