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優れたプロセッシング技術で新たな挑戦へ
《FOR-A Corporation of America》

〝顧客と朋に栄える〟朋栄
優れたプロセッシング技術で新たな挑戦へ
《FOR-A Corporation of America》

FOR-A Corporation of America
President & COO 兼村 聡
https://www.for-a.com

 映像制作機器とそれらを組み合わせたシステムインテグレーション事業を展開する朋栄は今年創立50周年を迎えた。2月に米現法FOR-Aの新社長に就任した兼村さんは、ソニーで35年、業務用放送機器ビジネスに尽力し、本社マーケティング部門長、米国バイスプレジデントを歴任してきた。世界の長編映画で初めて全編デジタルでの撮影が行われたスターウォーズ2でプロジェクトリーダーとしてカメラとシステム開発に携わり、また、ハリウッドに映像制作支援施設を構えクリエーターのデジタル制作トレーニングを行うなど、数々の功績を残してきた。

 〝顧客と朋(とも)に栄える〟という朋栄のフィロソフィーは、兼村さんが大事にしてきたことでもあった。「ビジネスを伸ばすために、コンテンツの質を上げたいのか、オペレーションのコストを下げたいのか、新しいことに挑戦したいのか、お客様の話をよく聞いて課題を把握する。そこに技術力をもって解決策を提案し、一緒にソリューションを作り上げていく。そうして生まれた新たなモノは、お客様のビジネスを助けるだけでなく、自社の強みになり、互いに進化していくことができる。FOR-Aは確固たる技術力があり、かつ小回りが利くので、自由度の高いソリューションを提案できるところが魅力です」。

  FOR-Aの強みは映像信号を処理するプロセッシング技術。例えば、全世界から放送局へ送られてくるニュースは、高画質カメラで撮影したものもあれば、スマートフォンで撮ったものもある。また、国によってフォーマットも異なる。それらを放送時に瞬時にぴったり合わせる(同期する)役割を果たすのがプロセッシング技術を載せたビデオスイッチャーやプロセッサー機器だ。

 同社の製品は米国では主に、放送局、スポーツやイベントなどのエンターテイメント分野、そして教会で多く採用されている。中でもコロナ禍で需要が伸びたのが教会でのライブブロードキャストだ。米国の教会では何台ものカメラを使って、人気ミュージシャンさながらの盛大なコンサートが行われる。コロナ禍、教会に足を運べなくなった信者のために教会はライブ配信を始めたが、そこにはいくつもの課題があった。

 「ビジネスの原点は、人が困っていること—ペインポイントをつきつめ、ゲインポイントへ変える手助けをすること。コロナ禍であろうとなかろうと、それが基本です」と兼村さんは言う。「撮影するスタッフ以外は自宅からオペレーションできるよう、リモート操作可能なビデオスイッチャーを開発しました。次に、重いスイッチャーパネルを自宅に持ち帰るのは大変なので、コンピューター上のGUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェイス)で操作できるようにしました。そして、ライブストリーミング用、SNS用、放送局用と、様々なコンテンツ向けの映像をひとつのプロセッサーで一人のオペレーターで行えるような機能を加え、さらに、ボランティアで成り立っている教会のオペレーション体制を考え、スイッチ一つでプロのような映像切り替え・合成操作ができるオートメーションの機能を組み入れました」。まさに、顧客の抱える悩みに応えていくことで生まれたイノベーションだ。

 昨年はコロナの影響で中止となった放送業界最大のイベント「NAB SHOW」、同じく北米の放送機器見本市「インフォコム(InfoComm)」が、今年はどちらも10月にオンサイトで開催される。兼村さんは、FOR-Aの米国市場でのプレゼンス向上、マーケティング強化というミッションを胸に、同社の技術活用の可能性を大きく打ち出す準備を進めている。

 人を惹きつける話術、明るい人柄であっという間に人との距離を縮める印象を受ける兼村さんに、米国でのコミュニケーションで心掛けていることを尋ねると、「日本人は段階を踏んで関係を作っていくところがありますが、初めからオープンに腹を割って話すようにしていますね」と笑顔で教えてくれた。新リーダーのもと、FOR-Aの新たな挑戦に注目したい。

《企業概況ニュース7月号 vol.269掲載》