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新ブランドを来春投入

【Cross Culture】世界の食文化に変化を与える“獺祭”ニューヨーク発、
新ブランドを来春投入

旭酒造株式會社《獺祭》
代表取締役社長 桜井 一宏 氏

獺祭、世界を駆ける

「ニューヨークが応援してくれたから、獺祭はアメリカにここまで広がったのです」と桜井さんはゆっくりと話を始める。日本酒のメッカといえば東北や上越をイメージする人が多く、酒処として山口県の名を挙げる人は15年前には少なかった。ましてや、獺祭という山口の山奥の小さな酒蔵で造られる酒の名を海外で聞ける機会はなかった。2003年に北米輸出を開始した獺祭。ニューヨークを中心に熱狂的なファンが生まれ、彼らが口コミでその魅力を伝え始メルト、その噂は香港やイギリスを駆け、一気に〝世界の獺祭〟として知られるようになった。

しかし、現状はまだ、獺祭が世界へ飛び出すきっかけができたに過ぎないと桜井さんは言う。「ニューヨークで昨年開かれた、有名ファッション・ブランドのパーティに獺祭ブースを出したところ、獺祭を知っていた人はたったの1%しかいませんでした。スタッフは少なからずショックを受けたようですが、私はこの話を聞いた時に『まだ、99%もの大きな市場がある』と嬉しくなったことを覚えています」とにこやかに笑う。

日本酒を世界の食文化とペアリング

日本食にも日本の文化にも、ましてや日本酒など試したことのない層に、どう獺祭を飲んでもらうか。それは〝体験機会を増やすこと〟───まずは飲んでもらい、日本酒が、日本食以外の食事とも非常に合うことを直感的にイメージしてもらいたいと桜井さんは言う。日本酒には世界の食文化とペアリングできる大きな可能性がある。この『日本酒には日本食を』だけでなく、『美味しい食事に日本酒を』というその先へと続く道を切り拓いていくカギとなる。このスイッチとなる「まず飲んでもらう」機会を創造していくことも桜井さんの重要な役割となる。

「パーティや試飲会の開催はもちろんですが、パリでは『獺祭・ジョエル・ロブション』というレストランを展開し、フレンチとのペアリングに日本酒を味わって頂く場を創りました。獺祭に合う料理を作ってもらうのではありません。フレンチの神様と言われたジョエル・ロブションの想いを継いだチームが作る渾身のフランス料理にも獺祭が合うのだという感覚を、食事を楽しむ皆様に感じて頂きたいのです」。

獺祭が導く日本酒の未来

世界の料理界で活躍するシェフやソムリエに対する日本酒の正しい知識を提供することも、日本酒の未来に欠かすことができない大切な仕事となる。世界最大の料理学校CIA(クイナリー・インスティテューション・オブ・アメリカ)と手を組むことで、日本酒自体の知識を教えるだけでなく、日本酒とのペアリングで引き立つ食材や、美味しく保つ保管方法、楽しく飲むコツなど、日本酒をサービスする者として必要となる専門的な知識を提供する。

昨年秋、桜井さんは、ニューヨークで開催された獺祭ファン向け感謝試飲イベントで新ブランド〝獺祭ブルー〟の誕生を告げた。これは、先述のCIAと共同で進める酒蔵新設プロジェクトで、2021年春にはニューヨーク生まれの新しい獺祭が登場するというもの。CIAで開設する日本酒・日本食常設コースでもこの蔵で造られた酒が使用され、確かな日本酒の知識を兼ね備えたイタリアンやフレンチなどの料理人たちも、自慢の料理に日本酒をペアリングするシーンが増えていく。こうした『食文化』に対する先入観を変える地道なアプローチが、獺祭の、ひいては日本酒業界を明るい未来へと導くのだと桜井さんは力説する。

青は藍より出でて、藍より青し

獺祭ブルーの語源となるのは、『青は藍より出でて、藍より青し』という古い日本の諺。「日本の着物の染めに使う青は藍を原料としていますが、そこから生まれる青は原料の藍よりも青く、深い青となります。───こうしたことから、弟子がいつか師匠を超え、そして子供が親を超えてより良いものを生む表現として用いられます。獺祭ブルーが目指すのは、本家の獺祭よりも美味しい酒を造ることです。そして獺祭の目標は、獺祭ブルーより当然美味しくそれを超えた最高のものを造ること。矛盾のように聞こえるかもしれませんが、この2つがお互いにライバル心を持ち、刺激し合い、切磋琢磨することで、より実験的で挑戦的な最高の酒となるのです」。

自分たちが最高だと信じる酒を

とにかく美味しい酒を造り、さらにそれを美味しくしていく。この強い意志をブレることなく持ち続けることが、旭酒造の社長としての桜井さんの使命だと言う。毎日、世界中のファンから多くの意見が届くが、こうした声に合わせて酒の味を変えていくことは絶対にしない。試行錯誤を繰り返し、自分たちが最高だと信じる酒を提供し続けていく。これが獺祭のあるべき姿であり、支えてくれるファンへの最大の恩返しとなる。  

「アメリカだけでなく、世界の食文化に日本酒が溶け込み、それぞれの食事の席で普通に日本酒が飲まれる。こうした風景を見てみたい。その時の酒が〝獺祭〟であればなお嬉しい。こうした世界の食文化を変えることは、造り手の力だけでは到底成し遂げられず、獺祭を愛し、楽しく飲んでくれるファンの皆様のパワーが絶対に必要なのです。世界の食事シーンに獺祭がある───これが桜井さんのやるべき大きな目標だと、その熱い想いを話してくれた。

《企業概況ニュース》2020年 4月号掲載

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