Home > エリア > CALIFORNIA > 土壌の微妙なニュアンスを表現したワイン造り

グリーンヒル・ワイン・サービシーズLLC
共同経営者 兼コンサルティング・ワインメーカー

石窪 俊星 さん / ERIC BAUGHER さん

https://greenhillwineservices.com

 1976年、フランスワインとカリフォルニアワインの威信をかけ開催されたブラインド・テイスティング〝ジャッジメント・パリス〟で5位に、その後2006年のリマッチで1位の栄冠に輝き、一躍世に名を轟かせた「リッジ・ヴィンヤーズ・モンテベロ(RIDGE Vineyards Monte Bello)」。そのリッジで経験を積んだベテラン・ワインメーカー2人が、サンタクララバレーで新たなワイン造りに挑んでいる。

石灰質土壌で育った、良質な葡萄を厳選

 13年勤めたリッジを2021年に離れ、ナパバレーでの新しいワイナリー立ち上げに参加した石窪さんだが、パンデミックやシリコンバレー銀行破綻などの余波を受けプロジェクトが中止に追い込まれた。また、1980年〜90年代のカリフォルニアワイン黄金期を牽引した老舗ワイナリーも世代交代を迎え、追い討ちをかけるように、山火事や天候不順による葡萄価格高騰など、業界全体の活力が失われている。そんな中、親友であり、リッジの元COO兼ワインメーカーだったエリック・バウワーさんの存在や自分自身の年齢や経験を考えると、ワイナリーを立ち上げるには、これ以上ないタイミングであると、2023年2月にグリーンヒル・ワイン・サービシーズLLCを立ち上げた。

 ベテランのワインメーカー2人が選んだのは、既存ワイナリーの設備や場所を活用したワイン造り。その土地の個性を十分に吸収し、古くからある、しっかりと根をはった木から採れた葡萄で造るワインを目指す。リッジやカレラワイン、フランスのブルゴーニュ地方のワインと同様に、ワインの味に大きな影響を与える石灰質の土壌で育った葡萄にこだわった。これにより、フルボィのエイジングにも耐えるワインができ上がるのだという。そのために必要なのが良い葡萄を入手することであり、手間暇を惜しまずに丁寧に葡萄を育てているパッションある生産者から、厳選された葡萄を譲り受けている。

〝酵母と発酵〟が原点

 将来、昆虫学者になることを夢見ていた石窪少年は、父親の大好きな焼酎ができあがるのに、生物の力が関わっていると聞かされ、その仕組みに興味を持った。中学時代には〝酵母と発酵〟発酵のメカニズムに興味を持ち、生物工学科が新設された熊本県八代高専へと進学を決めた。その後「富乃宝山」で知られる鹿児島県西酒造焼酎造りを学び、八代目蔵元の西陽一郎社長の影響もあり、リフォルニア大学デービス校で葡萄栽培とワイン醸造学を学ぶためにアメリカに渡った。卒業後、日本酒やエンジニアリングワイン醸造所での経験を経て、2008年から名門リッジのワイン造りに参加する。天才醸造家ポール・ドレーパーが指揮するワイナリー哲学を学びたいという思いもあったが、リッジ・ヴィンヤードが、日本の大塚製薬傘下にあることを知りとても驚いたと当時を振り返る。

 焼酎、ビール、日本酒からワインまで、様々なアルコール造りに関わってきた。そんな中、常に石窪さんの頭の片隅にあるのが、酵母や発酵によるアルコール造りに関わる人たちを集めた共同作業。フランスのトップワインメーカーと日本酒を作り、南アフリカやアルゼンチンの最先端醸造家と焼酎談義に華を咲かせたい。皆の経験や知識を総動員した先に新たな発見がある─その日を心待ちにする石窪さんがいる。

葡萄生産者への謝意をラベルに

 誕生するワインの新ブランド名は「Deaurātus(デュラタス)」。ラテン語で〝金〟を意味するという。2人合わせて50年以上の経験を持つワインメーカーが、助け合いながら、考え抜いて作られた究極のワインだ。その輝きを名前に込めている。完成したワインのラベルには、葡萄を大切に育ててくれた生産者への謝意を込めた絵がそれぞれに描かれる。2023年に仕込まれたシャルドネ、グラナッシュブランは今年7月に、、そしてジンファンデルとカベルネセーバニョンは12月にと、4品種のシングルビンヤードが、いよいよ市場に投入される。

 

 

*ワイン畑の説明

Grenache Blanc-Michael Michaud Vineyard
シャローンAVA。石灰質土壌の地に植えられている。パリスの審判で白ワイン部門3位に選ばれた Michael Michaud の畑で育てるブドウ。(140ケース生産予定 2024年7月リリース予定)

Chardonnay-Gali Vineyard
サンタクルーズの海から数マイルの地、フォグラインの真下に位置するカリフォルニアで最も涼しい地域にあるシャルドネの畑。しっかりと日差しを受けながらも冷涼な気候に支えられ、熟しすぎず、酸をしっかり保つブドウを育てる畑。(175ケース生産予定 2024年7月リリース予定)

Zinfandel-Tzabaco Vineyard
ソノマのジンファンデル黄金地帯 Dry Creek Valley に位置する畑。ヘッドトレインド・ドライファーミングでジンファンデルの特徴を生かし切った畑。(330ケース生産 2024年12月リリース予定)

Cabernet Sauvignon-Jilian Rose Vineyard
パソロブレスにあるアダレダAVAにある石灰質土壌の地にある畑。海からの冷涼な風の通り道に位置する畑に植えられている。(250ケース生産予定 2024年12月リリース予定)

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