Home > US Living > LIFESTYLE > Entertainment > アメリカの日本映画ファンや
映画作家たちが集える映画祭に(前半)

16回「JAPAN CUTS」を開催

JAPAN SOCIETY
映画部 ディレクター
ピーター・タタラ さんMr. Peter Tatara
映画部 フィルム・プログラマー
アレクサンダー・フィー さんMr. Alexander Fee

www.japansociety.org

 

 2023年8月6日、ニューヨーク夏の風物詩の一つでもある日本映画祭、第16回「JAPAN CUTS〜ジャパン・カッツ〜」(以降、ジャパン・カッツ)が好評のうちに幕を閉じた。パンデミック後初の完全対面イベントということもあり、気になる日本映画を大きなスクリーンで観ようと多くの観客が詰めかけ、会場は熱気に包まれた。主催するジャパン・ソサエティー(JS)映画部ディレクターのピーター・タタラさんとフィルム・プログラマーのアレクサンダー・フィーさんに開催の経緯を振り返りながら、この映画祭の魅力や今後の展開についてお話を聞いた。

 

Q.完全対面でのジャパン・カッツ開催でしたが、現在の心境は?

フィーさん 2019年のジャパン・カッツを最後に、パンデミック中の2020年はバーチャル、2021年はハイブリッドでの開催を続けてきましたが、いざ対面式に戻した時にどうなるか全く予想ができず、結果として多くの方にいらして頂いたことを嬉しく思っています。他の映画祭も対面式に戻している様子を見て、劇場の大きなスクリーンで映画を観ることを、多くの人たちが求めていると実感しました。

ピーターさん 今回、全部で29本の映画作品をセレクトし上映したのですが、映画の種類によって様々なタイプのお客様にご来場頂きました。「THE FIRST SLAM DUNK」や「レジェンド&バタフライ」といったメジャー作品の満席は予想通りでしたが、大ヒット作の部類には入らない、いくつかのインディーズ作品でもチケットが売り切れたことには驚きました。

 今回のセレクトで、私たちが視聴したのは130作品です。毎晩、午前3時頃まで、映画を観ては寝る生活で、非常に大変でしたが〝日本の今〟を感じる楽しい時間でした。一番の難しさは、ジャパン・カッツの趣旨に合わせたセレクトが求められたことです。この映画祭は、現代的日本映画祭であり、過去12ヶ月の日本映画を調査し、大ヒットした作品からインディーズ、実験的なものから短編、ドキュメンタリーまで、各ジャンルの映画を紹介するというものです。プログラマーと議論を交わし、ジャパン・カッツの〝バランス〟を考えながら、まとめていきました。最終的にはセレクトされなかった作品の中にも、本当に面白いものが数多く、プログラミング・チーム4人が全ての映画を観た上で、各作品の気に入った点や気に入らない点、映像作家や監督、俳優の印象や伝えたかったポイント等をこと細かに話し合い、29本の最終リストに落とし込みました。さらに重要なのが、ここで上映される多くの作品は、米国で上映されるのが、今回だけかもしれないということです。もちろん、他の映画祭や劇場、DVDやストリーミングで配信されることを願っていますが、こうしたアメリカの大スクリーンでの上映機会に恵まれない作品も多くセレクトしています。

Q.日本映画界へ多大な貢献をした監督や俳優の功績を称える「CUT ABOVE賞」が、俳優の柳楽優弥さんに贈られましたが、その理由は?

ピーターさん まず、柳楽さんの若いながら、表現者としての高い能力を高く評価しました。カンヌ映画祭で14歳の時に最年少主演男優賞を受賞され、そこからさらに50以上もの様々なジャンルの映画やテレビドラマに出演されています。この賞は、彼がこれまで映画業界で成してきた素晴らしい実績、そしてその才能に対して贈られたものです。特に、今回の出演作品「ターコイズの空の下で」では、セリフが少ない中で、肉体や表情による心理的、感情的な変化を見事に表現されています。

フィーさん 柳楽さんは、本当に類稀なる才能を持つ俳優の一人です。現代の日本映画祭においては注目すべき一人であることは間違いなく、映画祭自体を特別なものにしてくれます。今回のジャパン・カッツでは、「ターコイズの空の下で」の他、「さかなのこ」にも出演されており、その中でも重要な役割を演じられています。

Q.ジャパン・カッツが目指すこれからの形とは?

ピーターさん 私がJS映画事業部のディレクターに就任したのは6ヶ月前です。完全対面でのジャパン・カッツを開催する喜びと不安、両方の想いがありましたが、以前のイベント開催に関わっていたスタッフのサポートを受けながら、皆一丸となって作り上げました。当初の目標は、「これまで最大とは言えないかもしれないが、まずはジャパン・カッツを再開させ、成長させる」というものでした。今回の実績をもとに、これからも日本映画ファンや映画作家が集い、皆様に注目して頂けるようなイベントに育てていきたいです。そして、日本とアメリカの映画産業を結びつけ、より多くの良質な日本映画を配信できる環境を構築していきたいと願っています。

フィーさん もう一つ、私たちの重要な役割の一つに、現代日本映画界におけるネクスト・ジェネレーションを発掘することがあり、彼らの声をニューヨークなど海外の観衆へと紹介していくことが非常に大切だと感じています。特に、インディペンデント映画や低予算プロダクションの映画作家は、次のビッグネームになる可能性を秘めていますので、彼らの作品をいち早く取り上げ、紹介していくプラットフォームでありたいと思っています。

《後半に続く》JAPAN CUTS主催者に聞くアメリカのファンが「マンガや アニメ」に夢中になる理由(後編)

You may also like
JAPAN CUTS主催者に聞く
アメリカのファンが
「マンガや アニメ」に夢中になる理由(後編)
言葉はなくても、心は通じる
〝モンゴル宛のラブレター〟
第16回 JAPAN CUTS 〜ジャパン・カッツ〜 開催!
《ジャパン・ソサエティ》
11月24日(日)JNTOニューヨーク事務所主催
「Travel the artistic world of Japan in VR」開催