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特別トップ対談
《ユナイテッド航空》

ワクチンの普及と、陰性証明等の簡素化が緩和のカギ

ユナイテッド航空 アジアパシフィック営業部主催
在米日系旅行会社5社 特別トッ対談

 コロナにより大きな影響を受けた在米日系旅行会社を応援する立場を表明するユナイテッド航空アジアパシフィック営業部では、「コロナ後の新旅行形態、出張再開のキーポイントとリスク対策」と銘打ったオンラインセミナーを6月2日に開催した。同セミナーは二部形式で行われ、ユナイテッド航空の最新顧客サービス案内がされたのち、第二部では在米日系旅行会社5社の代表をゲストスピーカーに招いた対談イベントが行われた。

 ゲストスピーカーは、アムネット・ニューヨーク・インク(以降アムネット)代表取締役社長の中川扶二夫さん、HIS USAホールディングス(以降HIS)代表取締役社長の波多野英夫さん、IACEトラベル(以降IACE)代表取締役の長谷川大介さん、JTB USA(以降JTB)代表取締役社長の原田雅裕さん、近鉄インターナショナルアメリカカンパニー(以降近鉄)代表取締役社長の葉樹良さんの5名。

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① 今回のパンデミックを経験され、御社の経営哲学は変わりましたか?

HIS 波多野さん我々HISが世界共通の企業理念として掲げるのが「旅を通じて世界の平和を願う」というもの。多くの旅行者に旅に出てもらい、そこで何かを経験し地域への理解を深め、世界を知る───結果として、世界の平和に貢献できるという考えです。この一年は、コロナ禍で人々の行動が制限されて旅行どころではなかったと思いますが、基本に立ち返って、皆様に素晴らしい旅行をご提供していきたいと思っています。

IACE 長谷川さん経営哲学は変わっていません。創業時から、お客様の立場に立った考え方や対応の仕方を社員教育にも取り入れています。今回のコロナ禍で私たちがまず取り組んだのが、できる限り正確な情報をお客様に共有することでした。コロナ禍での不安に対応できるのは、機械やシステムではなく、一人ひとりに寄り添ったサービスだと強く感じました。過去の自然災害やテロといった難局も、広い支店網との協力体制や24時間予約センターを駆使しながら一つずつ乗り越えてきました。

JTB 原田さん旅行会社として、どのような価値を皆様にご提供できるのかという根本的なところを考えさせられる1年でした。「地球を舞台に、人々の交流を創造する」というJTBグループの経営理念があるのですが、物理的な移動も人が集まることも制限されたコロナの状況下で、我々はどのように交流を創造すれば良いのか。試行錯誤を繰り返した結果、お客様同士のネットワーキングを目的としたオンラインイベントや、米国進出を検討されている日本企業のマーケティングサポートなど様々な取り組みが実現できました。そこで、このような環境下でも、お客様の交流を創造するサポートはできると改めて確信しました。

近鉄 葉さん「旅行を通して、感動、喜びを、そしてビジネスにおいては成功を作る」というのが私たちの経営哲学の根幹にはあります。コロナ禍で気づかされたのは、どんなに市場が変化しても、お客様がいてくださることが企業の存在価値ということです。その顧客中心主義というところから、我々の経営哲学が変わることはありません。逆に、コロナによってお客様との距離が近くなり、色々なお話をさせて頂けたのではないかとも感じています。

アムネット 中川さん経営哲学は変わっていません。「お客様を大切にする、取引先企業様を大切にする、そして社員を大切にする」というものです。コロナ禍において、ものすごいスピードで情報が動きます。こうした情報をスピード感を大切に発信していく。さらにリモートでの働き方が進んだことで家賃などの経費は下がりました。こうしたものを会社の利益とするのでなく、今後のリモートワークにおける、社員とのコミュニケーションに利用したいと思っています。

② 今後の渡航規制緩和のキーポイントは?
また、旅行会社として日本政府に求めたいことはありますか?

IACE 長谷川さん簡単にまとめると大きく3つあります。1つはワクチンの普及、2つ目はワクチン接種済みを示す書類や陰性証明の簡素化、そして3つ目が入国規制の緩和です。特に日本への渡航ということを考えた時に、高額な検査費用を支払い、煩雑な書類を記入して準備していったにもかかわらず、不備があって入国拒否されたお話を聞くと、この部分は無視できません。

JTB 原田さんあるビジネストラベル団体が今年4月に行った調査データによれば、向こう3ヶ月以内に出張を再開しますかという質問に対し、在米企業の40%が国内出張に対してはイエス、海外出張へのイエスは全体の10%だけでした。このデータからも、ワクチン接種の進行、規制緩和が大きなキーワードとなることは明らかです。一方で、当面は国によってワクチン接種の進行状況が異なることを前提とし、ワクチンパスポートのようなワクチン接種完了を証明する仕組みにどう対応するかを固める必要があると思います。

近鉄 葉さん私も、日本国内の自主隔離緩和とワクチン接種の普及がカギだと思います。特に、書類の簡素化が一番です。アメリカ国内では、だいぶワクチン接種が進んでいますが、他国ではまだまだ遅れていて、残念ながら日本もかなり遅れています。今後は、企業の中での接種も積極的に行われると聞いていますが、できるだけ早い段階で入国の緩和に繋げてもらえれば良いと思います。

アムネット 中川さん日本政府に求めたいことは山ほどあります。今、コロナ禍で3度目の日本に来ていますが、日本の水際対策については全く理解できません。72時間前のニューヨークでの検査で陰性で、日本に着いての検査で陰性で、どうしてまた2週間の自主隔離が求められるのでしょう。東京都内には、多分検査もしてない人がいっぱい歩いてると思うのですが、どうして2回も陰性検査結果を持つ自分が隔離なのか、本当にストレスが溜まります。キャビンアテンダントさんはニューヨークから戻っても2週間の自主隔離は要求されないと聞いています。少なくとも、彼女たちと同じように自主隔離はなしにしてもらいたいですね。

HIS 波多野さんワクチン接種をすれば、昔のように安心して飛行機に乗れ、ホテルに宿泊でき、観光地で美味しいものが食べられるようになります。ワクチン接種を世界的にスピードアップすることが、やはりポイントだと思います。日本到着時の水際対策に対し、やはりあの煩雑な書類は特に年配の方には対応できないと思いますので、日本政府には、デジタル庁が主導でひとつのプラットフォームで簡単に対応できるような仕組みを期待したいです。

③ コロナ後を見据えた、ビジネス、観光、団体の中での新しい旅行形態をご提案下さい。

JTB 原田さん当面のキーワードは「ハイブリッド」と考えています。弊社でもこの1年間、様々なオンライン・アクティビティに取り組んでみて分かったのが、リアルでないものにも良さがあるということです。先述のネットワーキングイベントでは、物理的な移動の障壁がなくなり、全米各地や他国からも参加してもらうことが可能となりました。もちろん、リアルの良さは、皆で空気感を共有し一体感を醸成するということですが、このリアルで実現できないところをオンラインで結ぶ「ハイブリッド」の仕組みがポイントだと思っています。

近鉄 葉さん私もハイブリッドがキーワードになると思います。社内のコミュニケーションがより良くなった部分も見られますし、ビジネスや会議においても、バーチャルでのオンラインとオフラインを融合したハイブリッド型が中心になっていくのでしょう。そうなると、これまで宿泊と食事がメインであったホテルのスペースなどを、いかにうまく使うかということが新しいビジネスチャンスとなるかもしれません。団体旅行はより小型化し、比較的大型の場合でも団体がずっと同じ行動をするのではなく分散型になっていくだろうと思っています。

アムネット 中川さんコロナ前は年に5、6回、毎回2週間ほどの日本出張をしていたのですが、去年のコロナ禍2回の出張は、6ヶ月と3ヶ月という長期滞在でした。そこで感じたのは、〝住む〟というキーワードが今後あり得るかもということです。1〜2週間パリやハワイに旅行に行くという感覚でなく、数ヶ月単位でハワイやパリ、ロンドンに住み、そこで仕事もするスタイル。ワーケーションのようにバケーション先で仕事をする感覚ではなく、長期で住んで仕事をするノマドライフ的な旅行です。それに合わせて、ホテル手配や生活に必要な様々なサポートが旅行会社の新しいサービスに加わるかもしれません。

HIS 波多野さんマスク着用などの最低限のマナーやルールはしばらく残ると思いますが、私はコロナ以前のようなビジネス出張、リアルでのコンベンション開催が実際に戻ってきていると感じています。アフターコロナは大きく変わるという意見も多いですが、実はあまり変わらないのではと個人的には思っています。そんな中で我々のすべきことは旅行者の皆様に当地の最新情報をご提供し、安心して旅行ができる環境を作ること。個人的には、地球環境に優しい旅のご提案なども、今後の旅行商品の中に取り入れていきたいと考えています。

IACE 長谷川さん法人の出張手配では、より一層の危機管理が問われるようになると思います。ハイブリッドで出張機会は減るのかもしれませんが、現地に出向いていかなければいけない際に果たして行っても問題がないのか、いろいろな部分で危機管理面を重視しなければならない時代になるのでしょう。これまで通り、コンカーなどを使ったデジタル化は広がっていくと思いますが、我々は、その機械の後ろ側にいる企業の危機管理にどう対応し支えていくか。そこが今後のポイントでもあると思っています。

④ コロナ後の旅行再開に役立つメッセージをお願いします。

近鉄 葉さんコロナ後の旅行で一番大切なのは「安全」「安心」です。これがますます重要なカギを握ると思います。インターネットだけではわからない情報を、お客様それぞれに合わせた形でご提供する。それが、日系旅行会社を利用することで得られる最大のメリットですので、我々と共に、安全で安心の旅行を楽しんで頂きたいと思います。

JTB 原田さんミーティングイベントなどのコロナ後のトレンドとしては、リアルへの回帰が一時的に顕著になると思います。ハワイではすでに200名規模のミーティングが開催され、7月以降には500名超規模のミーティングも予定されています。ラスベガスなどでは、ホテルが取りづらい状況が発生しているとも聞いています。もし、社内ミーティングや各種イベントの再開も視野に入れているのであれば、検討再開の時期に差し掛かっているのかもしれません。

IACE 長谷川さん日系旅行会社は、皆様のために存在していると言っても過言ではありません。ここにいる5社も、間違いなく日本的な良質なサービスと、米国的な合理性を兼ね備えていると思います。それがアメリカに存在している日系旅行会社の強みです。こういう時だからこそ、会社にとって必要な要素は何なのか、そして何を最優先にしていくべきなのか再検討する良い機会だと感じています。

HIS 波多野さん昨年は、生き残りをかけてHISのネットワークを使ったオンライン旅行をご提供させて頂きました。普段は遠くて行きづらいアフリカのサファリ体験や、南米のマチュピチュ遺跡の様子などを、現地ガイドがライブで案内するものです。結果5万人以上の方にご参加頂くことになりました。コロナ後もリアルの旅に合わせてオンラインツアーを継続していく予定です。こちらで予習して、その後にリアルの旅行に出発してもらう。それにより今まで以上に内容の濃い、充実した旅行をお楽しみ頂けると考えています。

アムネット 中川さん私は、先ほどお話しした〝住む〟というキーワードを試して頂きたい。私自身も、これまでは2週間だけの東京出張でしたが、その短い期間では見えないものが、半年間という長期にしたことで見えてきました。一度上司を説得し、世界各地に身を置きながら働く体験をしてみてください。皆さんの人生が2倍も3倍も明るく楽しく、広がっていくかもしれません。コロナでリモートワークが身近になったこともありますので、この〝長期滞在型の旅行〟というものも検討してみてください。

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《企業概況ニュース7月号 vol.269掲載》

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