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H-1Bビザの需要 大幅に供給を上回る

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フォーチュン誌が選んだ500社のうち、40%の企業が外国人労働者によって設立されている。米国という大きな舞台に立ち、飛躍的な活躍をしている人たちも、最初は労働ビザで働きながら、今の地位を得てきた。近年はH-1Bビザは需要と供給を伴っておらず、優秀な人材が欲しいのにビザが発給されないと困っている雇用者の声も多い。今章は、外国人労働者が、米国経済にどれだけインパクトを与えているのか、また、H-1Bビザの申請状況を調べてみた。

H-1Bビザの申請さえ憚れる厳しい状況

H-1Bは、移民の人が専門職として、合法に米国で働くことができる労働ビザのことである。毎年85,000のH-1Bビザが発給されているが、近年、需要に供給が追いつかないという状況が続いている。米国移民(USCIS)は、2016年度のH-1Bビザの申請が、受付日からわずか一週で発給枠の約3倍を超え、4月13日の申込締切日には、233,000人の申請を受領したことを発表した。結果、昨年度に比べて35%増加し、抽選に漏れた人の数は148,000人、学位優位ケース以外で当選したのは、たったの30.5%という少なさだった。毎年H-1Bビザは、65,000、修士以上の学位を持つ人は20,000、計85,000が発行される。実は、政府は2004年からH-1Bビザの発行数を65,000まで減らした。これでますますH-1B ビザの当選の確率は低くなった。このようにここ数年、移民局が発行するH-1B の供給が需要に追いついていないという状況になっている。発給枠は減ることはなくても、前年で抽選に外れた人が翌年に再挑戦するというケースが多く発生しているため、必然的に申請者の数は積み重ね増加傾向が生じている。現在、雇用主は申請した3人のうち1人しかH-1Bビザの労働者を獲得することができないという厳しい状況である。どんなに大きな会社であろうが、売り上げが高い会社であろうが、そのビザ申請者のスキルが高いであろうが、アトランダムなくじ引きなので、抽選に外れてしまえばそれまでだ。当選しなかった申請者は、自国へ帰国するか、もしくは他のビザを申請するという選択に迫られることになる。米国の経済上向きの風潮の中、移民の受け入れ枠がここまで狭まれてしまったら、これからの米国の経済成長の危機感を指摘する専門家の意見もある。

H-1Bビザを取り巻く環境 ビザホルダーの収入が多い理由

特にIT 業界などはSTEM( S: サイエンス、T: テクノロジー、E: エンジニアリング、M: マスマティクス)の学位を持つ人材を採用優先とする。このSTEM教育を受けている人は海外から来た留学生が多い。米国生まれの学生がSTEMの学位を持つ例年の伸び率はわずか1%に過ぎない。STEMの専攻をしている生徒は通常のOPT期間の1年からさらに17ヶ月間を延長することができる。よって、もし抽選で外れてしまっても翌年、また申請することもできる。だが、それでもだめだった場合は卒業後、母国に帰るか、もしくはまた何か他のやり方で米国に残るかという選択を迫られる。そこで米国の雇用の受け入れが希薄になっているため、米国は優秀な労働者を逃してしまい、経済成長の好機を逃しているという指摘もある。米国で働くH-1Bビザホルダーは2010年から2013年の間、一人につき1.83件、さらにH-1Bビザホルダー全体では、2020年までに70万の米国人の雇用を創出すると予測されている。

H-1Bビザホルダーの収入事情 米国生まれより給料が高くなる傾向に

外国人のSTEM労働者は、米国生まれのSTEM労働者より61ドル(週給)高いという結果が出ている。IT 大手企業の5社でもH-1B ビザの給料が高いという数字がデータとして出ている。2015年度のH-1B ビザの収入の中央値では、Facebookが13万ドル、アップルが12万3053 ドル、Google が12万ドル、マイクロソフトが11万8643ドル、アマゾンが10万9050ドルだった。ほとんど上位をしめた職種はコンピューター・ソフトウエアエンジニア、ソフトウエアデベロッパー、コンピューター・プログラマーなど。全体の職種をみても、H-1Bビザの収入は若干高い。やはり、技術や経験などが大きく問われる職業は、外国人労働者の雇用の重要性は高くなる傾向が見られる。(図A)最大手のIT企業のH-1Bビザの申請の増加は近年特に著しい。2014年度は、マイクロソフトが一番多い3624人のH-1B ビザ申請を行った。2番目は3026人のGoogle 、3番目は1572人でアマゾン、4番目は1444人でアップル、5番目にFacebook と続いている。米国全体でみると、H-1Bの申請数では1位から3位の上位までが、インド系のIT企業が占めている。1位はInfosys LimITed(23816)、2位がTata Consultancy Services(14096)、3位がWipro( 8635)と続く。そして4位がやはりIT企業のIBM(7944)、5位がデロイト・コンサルティン(7016)だった。H-1Bビザの申請を多く行っている企業の8割がIT企業という結果になっている。H-1B ビザホルダーの外国人は、シリコンバレーで大活躍している。米国の大学に留学をしていて、給料が高く生活水準の高い米国で就職するというレールは、彼らにとって成功の道ともいえる。そして、企業にとっても、革新的なアイデアを持ち、高い技術力を持つ外国人の人材の魅力というものを知っている。IT 企業を牽引し、なおかつ日本企業のリーディングカンパニーを支えているのは、こうした外国人の力が大きい。だが、この道の妨げとなっているのが、このH-1Bビザ発給の問題である。企業側はH-1Bビザの申請をしてまでも、優秀な人材が欲しい。それにも関わらず、供給が追いつかないために、抽選に漏れてしまい、思うように人材が確保できないという問題にぶつかっている。ある専門家の意見では外国人労働者を増やすことによって、米国人による仕事の内需縮小が起きるというマイナス面の指摘も聞こえる。政府はこのような事態を未然に防ぐための発給規制をかけているという慎重な姿勢が見え隠れしているようにも思える。実際にエンジニアなどの人手不足が騒がれているが、こうした政府による大きな壁が影響を及ぼしているのかもしれない。

政府に立ち向かう大手IT企業

FacebookのCEO、マーク・ザッカーバーグがこうした就労ビザの発行条件の緩和を訴えた移民制度の改革を目指す政治団体「FWD.us(フォワード・アス)」を設立した。外国人で、優秀な技能を持つ人や高度な教育を受けた人たちが、米国での就労ビザを取得することすらできずに、諦めて母国に帰る人が大勢いる。さらに、米国のSTEMの大学院生の40%を占める移民が米国企業に就職ができていないとザッカーバーグは、「移民国家として成り立ってきた米国がなぜこのような制限をするのか」とこの厳しい現況を訴えた。他にDropbox のヒューストンCEO、LinkedIn のホフマンCEO などが創設者として名前を連ねる。また、Yahoo! のCEO、マリッサ・メイヤーやGoogle のシュミット会長などが賛同している。一方、マイクロソフトのビル・ゲイツ会長は、これまで移民の就労ビザの規制緩和に訴えを示してきたにもかかわらず、近年の業績不振を理由に大量の人員削減を行ったため、各方面から厳しい意見が飛び交っている。

日系企業でもH-1Bビザ問題はシビア 新卒雇用の懸念高まる

留学生の数が減少しているという背景にはこうしたH-1Bビザの取得状況が大きく関係してくる。学校を卒業したら、日本で就職をすると最初から決めている人が多く、OPTも取らずに日本へ帰る人も多いという。「新卒の方で、米国で就職をしたいという人はかなり激減しました」とニューヨークの人材派遣会社のスタッフは言う。「ビザのスポンサーをする企業さんが減ってきたという理由もあります。特に金融業界、大手の商社などは少なくなってきましたね」ビザの発給枠が限定されていると、取得できない場合は来年まで待たなくてはならなくなってしまう。1年から2年という短い期間で正社員というポジションを雇うこともできない。日本のように新卒者の人数を決めるといった人事計画も立てることもできない。現在の傾向としては、人材募集はほとんどがニーズによってポジションを埋めるといった目的が多い。まして、米国の場合は辞める2週間前に会社へ辞めることを告げるのが一般的。その2週間の間に新しい人材を探さなければならない。H-1Bビザの申請のタイミング、仕事をいつまで継続できるかなどといった問題に直面することになり、万が一、取得できなかったというリスクは避けられない。「1年後のことが分からないのだったら、学生の新卒は控えておこうか」ということになる。しかし、リスクを取ってまでも「1年間はとりあえず、頑張りましょう。抽選に漏れてしまったときはその時考えましょう」という企業も稀にあるという。ニーズがあるのにビザの問題で壁を作られてしまっている。人材派遣会社もこの問題については頭を抱えている。企業側が労働ビザに関する高い知識を持ち、いざというときに対応できるようにしておかなければならない。そのためにも、しっかりとコンサルティングができる専門家や弁護士などをいかに上手く活用できるかということが重要になってくる。

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