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ポストパンデミックの商業不動産業界を予測する

【NY商業不動産ウォッチング】
ポストパンデミックの商業不動産業界を予測する

 世界は新型コロナウィルスパンデミックで日々の生活が激変した。私達は新しい現実に適応するためにウィルスと共に仕事、生活をすることを余儀なくされている。ロードマップとなる前例がない為にまだ感染が続いている現状下では先行きが不透明であり予想はつきにくい。弊社のお客様もあらゆる業界において事業展開の見直しや、開発計画の保留などに直面している。ポストパンデミックの時代に私達はどう生活するか、働くかという課題が与えられた。確実に言えるのは緊急事態が終わっても世界は以前と同じようには戻らない。行政は改善され、今までなかったサービスや商品が開発されて生活の質が向上するであろう。私達はさらに発展し成長していくのだ。9・11 の時ニューヨークはもう世界貿易センターのような高層ビルは建設しないとか、人が街には戻ってこないとか言われたが、実際にはニューヨークにはさらに高いビルが建ち、以前にも増して世界中から投資家が集まり、多くの新しいビジネスが作られ、著しい経済成長を遂げた。今後はさらに拍車がかかり教育、医療、ショッピング、娯楽、サービス産業、不動産などのほとんどすべての業界においてビジネスのオンライン化が一層進むのは確実である。

 ロックダウンに伴い、従業員の解雇、失業率の増加はまだ始まったばかりで、オフィスマーケットはホテルや小売業と違い影響が顕著にでるには時間がかかるが、オフィススペースの需要性が問われている。多くの企業が完全にパンデミック前のオペレーションに戻ることもオフィスに全員が戻る必要性もないことも示唆している。特に先が読めない状況下において伝統的な長期のリースを避ける傾向が強くなるであろう。コワーキングスペースの需要は伸びると思われる。

 マンハッタンは、世界のなかでも最大のビジネス都市であり高層ビルのオフィスタワーはビジネスの成功とパワーの象徴だった。毎日何十万人ものオフィスワーカーが公共交通機関を利用し、レストランで食事をし、ショッピングを楽しみ、莫大な税金を州や市に支払ってきた。特にこの数年テックセクターの好調が手伝ってマンハッタンのオフィスマーケットは、大きな伸びを示した。しかし状況は一変した。ソーシャルメディアのツイッターは、5月12日付けで従業員の全てに対して仕事に支障がない限り永久的に在宅勤務の選択が可能である旨の通知を出した。この決定は、テック企業がオフィス市場の大きな役割を占めていただけに重要な意味を持つ。今後のオフィスリーシングに大きな影響を及ぼし、他の企業にも疑問を投げかけるものとなる。”本当にオフィススペースは必要なのか?” 多くの企業は、在宅勤務でも仕事に支障がないことが分かってしまった。フェイスブックとグーグルは、現時点では年内まで在宅勤務のポリシーのままであるが注目したい。小売業については、商務省の5月15日の発表によると4月の米国の小売り総売上高が前月から16・4%減少して403.9ビリオンドルとなり調査が1992年に始まって以来の最大の減少となった。特に衣料品とアクセサリー関連の業界が大きな打撃を受け2月から49・4%の減少、3月から4月にかけては78・8%に急落した。百貨店大手のJ. C. ペニーは、ニーマンマーカスと同様破産申請を出した。グロサリーストアの4月の売上高は、13・2%の減少。レストラン及びバー業界は29・5%の減少。調査によれば、5月のレントを完全に支払いすることが出来ると答えたレストランは13%しかなかった。レストランの再開が許可されるフェーズ3の時点で、どのような規制フェーズのもとで営業が出来るか政府のガイダンスが現時点では不確実である。現状のソーシャルデイスタンシングの規制では、約70%のレストランが利益が上がらず営業は困難であると報告されている。アマゾン傘下のホールフーズは、店頭販売よりもオンラインでの食料品の需要が高まる中、将来は配達に特化したダークストアを増やしていくと発表した。路上店舗の空室率が今後の数カ月で急上昇すると専門家は予測している。

 米国ホテル業界においては、少し良いニュースが出てきた。ホテルリサーチ会社のレポートによると、5月3日から9日の週において可能な部屋あたりの収益と平均客室料金は改善され収益は前週の21・39ドルから22・95ドルに増加した。これはレジャーの旅行者が戻ってきた事を示している。しかし改善されているとは言うものの2019年の同じ週のパフォーマンスからは程遠く稼働率は前年比56%近く減少し5月9日時点で30・1%を示した。平均客室料金は、42・1%減少の76・25ドルとなった。ホテル業界の回復は、会議やコンベンションの利用、海外旅行者が戻ってくるまでにかなり時間がかかることが予想される。しかしホテルが再開されてもレストランやバッフェの朝食の提供などは、課題が残る。最後に現在多くの企業のテナントがリース契約書のリビューを余儀なくされているはずである。9・11の出来事からそれまでなかったテロリスト保険の加入がリース契約書の中にみられるようになったが、パンデミックに当てはまる事項が記載されているのは少ないと想像する。

 今回の新型コロナウィルスにより、将来はリース契約書にパンデミック条項と保険が要求され交渉の重要な対象になるであろう。

 テナントは家賃の救済措置を弁護士と相談するべきである。今回のビルのシャットダウンは行政命令による強制的な閉鎖でありビルのオーナーによる決定ではない。

 しかしテナントはスペースを使用できず、パーフォーマンスが不可能であったとして賃料支払いの削減あるいは拒絶ができるか、支払い延期が可能か、リース契約の中途解約ができるか、訴訟ができるかなどあらゆる可能性を探る必要がある。

 まずはリース契約書を弁護士にリビューしてもらうことをお勧めする。保険会社にも損害賠償責任保険のリビューを依頼する。契約書や保険の解釈は非常に困難であるので、弁護士のアドバイスのもとに家主と交渉をする。一方的に賃料支払いを止めるべきではなく、あくまでも契約書に基づいて家主とコミュニケーションを取りながら処置していく事が大切である。

Masubuchi Realty LLC
社長 増渕 敬子
keiko@masubuchirealty.com

《企業概況ニュース》2020年 6月号掲載

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