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《JETROシカゴ事務所》

〝物流の心臓〟としての機能を持つ州、イリノイ州
《JETROシカゴ事務所》

イリノイ州から広がる新しい波

 

製造業 x イノベーションに活路

 〝イノベーション&スタートアップ〟をキーワードに、注目を浴びている中西部。特に、その西側農業州〝プレーンズ〟の小さいながらもキラリと光る優れた技術にフォーカスが当てられている。難病治療で世界的に有名なメイヨ・クリニックのあるミネソタ州は、最先端医療機器や医薬バイオ関係のスタートアップ集積地となり、シェール革命によりその埋蔵量が全米第2位となったノースダコタ州では、コーンフィールドを活かしたエタノールや水素開発にも力を入れ〝エネルギー州〟としての新しい顔を手に入れた。他にも、航空部品のカンザス州、ジオテックのミズーリ州など、様々な挑戦や取り組みが中西部に新しい風を吹かせている。

 他方、中西部全体の米国全体におけるGDP比率約20%のうち、半数以上の13.1%を生み出しているのは、自動車産業を中心とする製造業5州〝グレイトレイクス〟。中でも全米第3の都市シカゴを擁するイリノイ州は、カリフォルニア州、テキサス州に続く全米製造業GDP第3位の地位を占めており、フォーチュン500企業数や日系企業数において、中西部12州内最大の州となっている。

◇◇◇◇◇

 イリノイ州は、東部の工業地帯と西部の農業地帯を結ぶ州として、これまでも非常に重要な役割を担ってきた。全米の中央に位置するロケーション、四方八方へと伸びる高速網、南北を流れるミズーリ川とミシシッピー川、そして8本の滑走路を持つ巨大なオヘア国際空港─陸路、水路、空路で全米各地へと物を送り出す〝物流の心臓〟としての機能を果たす。さらにシカゴでは、世界三大工作機械見本市「IMTS」や米国最大級の食料品商談会「NRA(ナショナル・レストラン・アソシエーション)Show」といった巨大展示会なども数多く開催され、ヒト、モノ、カネが常に流動する場所となっている。近年の傾向としては、〝製造業×イノベーション〟の集積地としても注目されている。

 近年の動きとしては、ウーバーが貨物運送部門のHQをイリノイ州に設け、他にもシップボブ、ハウルのハウンド・ドットコム、エコー、コヨーテロジスティクスなどが拠点を構えるなどロジテック、サプライチェーン関連技術に強みを持っている。また、2023年には、製造業サプライチェーンのCADDI(キャディ)と倉庫物流のラピュタ・ロボティクスの2社が進出。ラピュタ・ロボティクスの森社長は「自動車産業を中心とする製造業の要である中西部から我々の技術を使った倉庫革命を起こしていきたい。それができる環境がここにはあると考えています」と進出の理由を話す。

 シカゴおよびデトロイト日本総領事館の調査によれば、中西部約2500の日系企業のうち、670がイリノイ州に拠点を置く。半数以上の388が製造業に携わり、自動車業界だけでなく化学、電気・電子、精密機械、工作機械、金属・鉄鋼、食品、タイヤ・ゴム、薬品など多岐にわたっていることもイリノイ州を魅力的な州にしている。イリノイ州の在留邦人数は中西部12州中最も多い1万5442人(2021年)で、その多くがシカゴ(2663人)、シャンバーグ(1538人)、ホフマンエステイツ(921人)、アーリントンハイツ(887人)、パラタイン(722人)、バッファローグローブ(572人)、エルクグローブ(559人)と、シカゴ近郊に住居を構えている。(2019年調べ)

日米関係の潤滑油としての〝グラスルーツ〟

 日米経済・社会の更なる発展のために活動を続けるジェトロ・シカゴ事務所では、農業主力7州(ノースダコタ、サウスダコタ、ミネソタ、ネブラスカ、アイオワ、カンザス、ミズーリ)と、製造業主力5州(ウィスコンシン、ミシガン、イリノイ、インディアナ、オハイオ)の全12州を管轄州とし、日系スタートアップ企業と中西部企業のビジネスマッチングや対日投資支援をはじめ、様々な調査や情報発信、日系中小企業の対米展開支援などを行なっている。近年は〝グラスルーツ事業〟と称した、各州政府や州知事、ビジネスコミュニティとの関係構築に特に力を入れている。

 また、シカゴでは北米市場に日本の食品や農水産物の対米輸出を拡大するため、各種ある品目のうち日本酒と和牛の幹事事務所として積極的に活動している。「中西部は、良くも悪くも色々な意味で『保守的』なのですが、言い換えれば、食に限らず様々な領域において開拓の余地も大きく、とても面白みのあるエリアだと感じています」と西澤さんは話を括った。

《取材協力》
ジェトロ・シカゴ事務所
次長 西澤 知史 さん

アメリカ中西部での暮らしの醍醐味は何といっても広大な自然を満喫すること。シカゴは美術や音楽など中西部を代表する文化の発信基地でもあり、全く飽きることがないとのこと。シカゴに住んで唯一厳しいと感じるのは冬の〝寒さ〟だとか。現在は、総務・人事が主担当ながら、日系企業の米国進出支援、さらに自動車産業の販路拡大も担当している。

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《企業概況ニュース2023年7月15日号 vol.296掲載》

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