Home > Featured > コロナに影響されず 台湾フィンテック急成長
GDP Inc
Co-founder & CEO 黃 俊傑 Amos Huangさん           https://www.gdp.world/

 コロナウイルスの世界的流行により、世界中の人々が在宅を余儀なくされている。しかし台湾はこれまで都市封鎖しておらず、新たな症例なしの報告が4月に7度も発表された。人口2378万の小さな島国がこの非常に感染力の高い病気をどのように抑制しているのか、多くの人がそれを知りたがり「台湾」という名前は複数の国際的なメディアに登場した。「新型コロナウイルスの発生に対して政府が迅速に行動しただけでなく、台湾の人たちは必要な措置を講じることにも積極的だった」と台湾企業GDP Inc共同創設者兼CEOのAmos Huang (黃俊傑)氏は語る。

 GDP(Global Digital Payments)は、アジアを拠点とするフィンテック企業で、ローンや投資サービスの資金調達において、新しい経済セクターや中小企業を支援している。 同社は、AI、ビッグデータ、ブロックチェーン等のデータ分析手法を活用し、ビジネスの市場価値査定を専門としている。AI分野のビジネスで10年の経歴を積んできた黃氏は、このテクノロジーを小売業やeコマース業界以外の分野にも応用できることに気付いた。AIが金融市場に突破口をもたらすと確信し、ビッグデータを専門とする友人と共に金融のバックグラウンドを持たずにこの業界に飛び込んだ。この数ヶ月間、新型コロナウイルスの影響で世界的に経済が不透明だと言われているにもかかわらず、同社は急成長した。同社がリリースした越境決済プラットフォームPEZZALoanは、サービス開始後3ヶ月で損益分岐点を達成。PEZZALoan上での取引額は3000万ドルに達する見込みである。それはコロナウイルス感染拡大が経済を破壊しているため、海外で事業展開する台湾の中小企業が融資支援を求めているからだと黃氏は説明する。

 台湾政府はパンデミックの影響を受けた人々にいくつかの経済刺激策を提供しているが、「充分ではない」(黃氏)。このようなわずかな金額で何とかやりくりするのは可能だが、企業が長期的に生き残るには不十分である。従来のローンシステムでは、借り手が融資を受け取るにはキャッシュフローを開示し担保を差し出す必要があるが、現代経済において、物的資産を持たない企業もある中で、一部の企業にとってはローン申請が困難になる傾向がある。 特に台湾で勃興している新興経済においては、その例があてはまる。例えば、フォロワー数が100万人のインフルエンサーがローンを得たいと考えても、銀行がそれを承認する可能性は低い。「個人投資家のお金を保護する上で金融規制は通常保守的で厳格ですが、こうした規制がインターネットの機能性からかけ離れていると気付いたのは、この会社を設立してからです」と黃氏。

黃氏は将来、特に台湾のようなハイテク産業の島では、デジタルコンテンツ、特許、AIなどの無形資産が増えるだろうという。しかしこれまではこれら無形資産は適切に評価されていなかったので、それを念頭に、GDPはデータを通じてクライアントの評価を分析し、適切な貸し手とマッチングすることを約束する。「これは、特にアジアでは前例のない方法で、P2P (Peer to Peer)サービスは沢山あるが、クライアントを評価するためにデータを活用することはあまりなかった」と黃氏は言う。さらに同社のサービスはeコマース、広告業界、アプリケーション開発、ライブストリーミングに特に適しているという。 同社が提供するサービスは、貸し手と借り手を適切にマッチングするだけでなく、常に借り手の状態をチェックするため、貸し手も安心できる。

 同社の次のステップは海外市場への展開で、今までにシンガポール、日本、香港、フィリピンに海外支店を設立しており「私たちの台湾でのビジネスモデルを、順調にいけば年末までに海外支店に転用できるようになるでしょう」と黃氏は語った。最終的な目標は、越境貸付を可能にすることだ。国によって貸出金利が異なるため、資本金が少ない投資家であっても他の国の債務に投資する機会があれば、高い投資収益率を得ることができる。

 コロナウィルスの発生以来急成長している同社だが、黃氏は慎重だ。「我々はインターネット企業なのでそれほど経費は掛からないものの、コスト管理には厳格です」。黃氏はまた、従業員を2つのグループに分割し、異なる時間に働く分割勤務も実行している。従業員は、会社の性質とウェブに精通した労働文化をもち、リモートワークのライフスタイルに満足している。黃氏はまた、コロナウイルス禍で分割勤務は政府の命令ではなく、国民からの積極的な対応であるという。 台湾企業の多くはこのような情報を早い段階で共有し、企業は必要に応じてバックアップ計画を考えていると語った。

 最後に黃氏は、このような状況では将来何が起こるか誰にも予測できず、どの企業も“キャッシュ・イズ・キング”の考え方を持つべきだという。「いつワクチンができるのか誰にもわからない、そして発生が減速しているように見えたとしても、冬に第二波が発生する可能性があるとも言われている」。企業は資金調達を制限しできる限り節約する必要がある。しかし投資については、投資家は他の投資形態を検討できると述べた。

 

《企業概況ニュース》2020年 5月号掲載

You may also like
米国パソナ主催ウェビナー・エグゼクティブ対談シリーズ
《Cambridge Technology Partners Inc. 編》
『世界で一番やさしい考え方の教科書』発売
《ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ》
消費者向けの最新技術 コンシューマーテクノロジー(CES 2023)
半導体市場の好況を追い風に
新たな〝創造と挑戦を楽しむ 〟
《NTKテクノロジーズ・インク》