Home > エリア > MIDWEST > ILLINOIS > ロボットの導入で、倉庫物流事情に変革
《Rapyuta Robotics》

導入効果を実感する‘カスタマーサクセス’がポイント

Rapyuta Robotics
執行役員 森 亮 さん(写真左)
www.rapyuta-robotics.com

 

ロボット同士で話をさせて協調できるようにすれば、ロボットの可能性は大きく広がる

「ピッキング・アシスト・ロボット」と呼ばれる倉庫物流を自動化する制御ソフトウェアで、日本マーケットシェア50%を誇るラピュタ・ロボティクス。2022年5月に調達した約50億円の資金を元手に、北米市場の倉庫ビジネスの課題解決へと乗り出す。

 創業者のガジャンさんとアルルさんは、スリランカの高校を成績優秀者として卒業後、文部科学省の奨学金を得て東京工業大学で学んだ。その後、ガジャンさんはアインシュタインが卒業したスイスのチューリッヒ工科大学でロボット制御ソフトウェア基盤を研究し、ロボット工学の博士号を取得。2014年、アルルさんと共に「ラピュタ・ロボティクス」を設立した。

ロボット同士で話をさせて協調できるようにすれば、ロボットの可能性は大きく広がる──これが、ガジャンさんの提唱するコンセプト。そのコンセプトを基に〝倉庫のピースピッキング〟領域に焦点を当て、倉庫内の人の歩行時間を節減していく。倉庫作業で、人が棚から荷物を下ろし搬送するのに、1日のうちの約5〜6割の作業時間が費やされるという。この改善に向けて半自動化するには、複数台のロボットが渋滞や衝突をしないよう制御する、非常に高度な技術が必要となる。ラピュタでは〝クラウド・ロボティクス〟という技術を使い、この課題を解決していく。

日本以上に大きな可能性がある、米国の自動化ニーズ

8月からの本格的な米国移住に向け、出張ベースで準備を整える森さん。すでにシカゴ郊外のシャンバーグにオフィスを構え、年内には約20名体制へと移行していく。自動化は、人件費の安い発展途上国よりも先進国の方が価値を認められやすく、また、市場規模や規制状況などを考えると、最初の海外進出国としてアメリカが適切だった。中でも物流ハブとして機能し、優秀な人材が集まるという地理的背景、そしてロボティクス事業をするのに、十分なスペースが確保でき、物価的にもバランスの良いシカゴが拠点として選ばれた。

 「半年間アメリカ市場を見てきましたが、人件費が高く、費用対効果も得られやすいという点で、自動化ニーズは日本以上にあると強く感じています。また、ロボットの導入や自動化に関する知識や経験を持っている人も多く、大きな抵抗感もなくどちらかといえば導入には積極的といった印象を受けています。ポイントとなるのは、ロボット導入後に効果を実感して頂く〝カスタマーサクセス〟の部分です。技術に強みのある会社には、優れたソリューションだけを提供し、どう使うかはお客さん次第というセルフサーブ型の方針を取るところも少なくありませんが、我々は最高の技術を提供しつつ、さらにその後のサポートもしっかりするというスタイルを貫いており、日本でもそこが我々の大きなアピールポイントの一つとなっています。日本での話となりますが、サービス開始から4年で1件もキャンセルがなく、このリテンションの数値も大きな実績となると考えています」。

カスタマーサクセスを積み重ねていくことが大切

大学卒業後、金融業界でM&Aアドバイザリーに携わり、その後グーグルのマーケティング部門でアジアパシフィック地域向けのプログラム統括として活躍してきた森さん。元々、自分でパソコンを作ったりするほどのテクノロジー好きだが、このロボット制御のスタートアップ企業のことを知った時には、胸が大きく高鳴った。市場の大きさという点もロボットでの業務改革という点でも、今回の責務には〝楽しみ〟という気持ちしかないという。まずは案件を増やし、カスタマーサクセスを積み重ねていく。このステップを大切にしていきたいと森さんは言う。

もし、自分で会社を立ち上げるとしたら、どんな会社を作りたいかという質問を投げかけてみた。そんな問いに対し「教育分野とテクノロジー分野を掛け合わせたビジネスには夢があると感じます。学ぶことは人類に不可欠ですし、今の時代テクノロジーやAIを入れないビジネスは考えられません。テクノロジーを活用し、新しい価値観を生み出せる会社をやってみたいですね」と笑顔で語ってくれた。

Rapyuta Robotics シカゴオフィス
935 National Parkway,
Suite 935-45,
Schaumburg, Illinois 60173

《企業概況ニュース7月15日号 vol.296掲載》

 

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