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第五回 Process:施策を実現するための計画

 前回は「Product」で施策の出し方と具体化の方法をお伝えしましたが、せっかく検討した改革施策も実行されなければ意味がありません。また日本本社主導のプロジェクトが「降ってきた」場合に計画は現地で考えてほしい、と言われるケースもあるかと思います。今回は具体化した施策を実現可能な計画に落とす「Process」をご紹介したいと思います。

マスタスケジュール作成時の7つのポイント

各施策についていつ何をやるか、1か月単位くらいにブレイクダウンしたものをマスタスケジュール(プロジェクト全体計画)と呼んでいます。長さや中身は施策内容によって異なるのですが、ここではどんな時でも共通して考えるべき7つのポイントをお伝えします。

1. 締め切りを確認する 守らないとマズい締切の有無を確認しましょう。例えば…

・新製品のローンチに向けてXXしなければいけない
・法規制の対応をXX迄にしなければいけない
・システムの保守切れに伴いXXまでに入れ替えなければいけない

2. 積み上げより逆算で計画する

マスタスケジュール作成時は、締切設定したゴールから逆算して計画しましょう。最後にこの状態になるためにはその前に〇〇が必要で、となるとその前にはXXが必要で…といった具合に考えることで、タスクの抜け漏れを防ぎ、主要なマイルストーン(判定タイミング)を設定できます。

3. 繁忙期やホリデー期間は避ける

北米日系企業は規模も日本より小さく、人員に余裕が無いケースが多いのではないでしょうか。改革施策の本番稼働日や、その前後の忙しくなるタイミングは、業務担当者の繫忙期やホリデー期間を避けて設定しましょう。例えば経理部なら月締めは避けるとか、担当者が交替で休暇を取りがちな11月後半から12月は避ける等が考えられます。

4. すぐに効果の出る施策は先にやる

業務改革プロジェクトの効果が出るのは早くても半年、長くて数年です。しかし、プロジェクトとしての熱量を保てる期間はそんなに長くないため、なるべく早く効果が出る施策を先に行うという考え方もあります。例えば、時間がかかるシステム構築に着手する前に、Excelなどを駆使しながらルールと運用方法の改善を先行した方が、Quick Winを達成できます。新事業・サービス開発でしたら、アジャイル型で機能を個別リリースしていくのも良いでしょう。

5. キーパーソンの関与時間を考慮する

いかにアグレッシブな計画を立てても、自組織の体制がついて来られなければ意味はありません。特に改革において重要な意思決定を行えるキーパーソンの時間は不足しがちになります。キーパーソンのプロジェクト関与は十分確保できるか?不在期間は考慮できているか?不足するパワーは外部調達可能か?など、プロセスを検討する際は「やり切れる体制と期間になっているか」を含めて計画しましょう。

6. バッファを確保する

変革プロジェクトは今までやったことのないことに挑戦するので、本質的に不確実な活動です。なので、遅延を吸収するための期間的な余裕(バッファ)をスケジュールに入れ、遅延リスクを減らしましょう。ただし、各タスクにバッファを積み過ぎると「まだ締め切りまで余裕はある」という心理が働き、気づけばズルズル遅れて手遅れに…ということが起きがちです。バッファは各タスクに含めるのではなく、プロジェクト後半にまとめて置いておくことで、プロジェクトをスピーディーに進めることができます。最後にバッファを使わなければラッキー、くらいに構えておくのが大事です。

7. 関係者と合意する

関係者全員に「このスケジュールでいけそうか?」と確認して回りましょう。見落としていたリスクを発見し、より実現可能なスケジュールにできます。またこの際、日本本社や駐在員の中だけではなく、現地の実動メンバーからもアドバイスをもらうのが重要です。彼らの多くは「マネージャーが計画を提示するものだ」と思うと同時に「自分の首を締めたくないし、助けられるものなら助けたい」とも思っているので、素直に「この計画どう思う?」と聞いてみるのも一手です。自分の知らないところで進められた計画より、初期段階から関わったプロジェクトの方が思い入れも増えるものです。

 

皆さんが日頃から意識しているポイントはありましたか? 次回はいよいよ最終回、「 Possible Issues:常に把握すべきリスク」を紹介します。お楽しみに!

 

《執筆》
ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ

ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズは在米日系企業の業務改革、IT 戦略立案、DX に必要なコンサルティングサービスを提供しています。あらゆる変革の立ち上げから導入までを円滑に進める方法論とバイリンガルファシリテーションを武器にプロジェクトを成功に導きます。日本では 2015 年以来「働きがいのある会社 Top 10」に選出され続けています。http://www.ctp.com

ティンダル 玲子(てぃんだる・れいこ)
大手コンサルファーム・事業会社、米国大学院留学を経て、2020年ケンブリッジ米国法人入社。大手グローバル製造業のERP導入(SAP 財務会計)、組織再編に伴う経理業務移行支援、クリーンエネルギーに係る新事業戦略立案支援などに従事。米国・ドイツ・日本でプロジェクトを7年経験。

 

 

 

《企業概況ニュース》2023年10月号掲載

 

《連載》コンサルタントが実践する 現地法人変革の進め方

連載① 4+1のPで変革をリードする
連載② Purpose:プロジェクトの意義目的の明文化と浸透
連載③:People:組織横断でOne Team となれるプロジェクトチーム
連載④ Product:課題を解決する施策出しと具体化

 

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