Home > US Living > HR > 第四回 Product:課題を解決する施策出しと具体化

 今回は3つ目のP、「Product」を紹介します。変革を起こすために必要な施策出しには、改革のテコとECRSの原則を使い、出された施策の具体化には、発散・収束モデルを使います。

1.施策出し

 施策を出す上で大事なのは、考え得る限りの全施策案を出し切ることです。出し切らないと「本当はこんな案が良いと思っていたのだけれど」といったモヤモヤを抱えたままプロジェクトが進むことになります。北米の日系企業でしたら、駐在・現地採用それぞれのマネージャー及び担当者から幅広く忌憚ない意見をもらいましょう。どう意見を出してもらえば良いか? まず、何を変えるのかを考える切り口として「改革のテコ」が使えます。業務改革のプロジェクトでは業務プロセスや情報システムがテコになることが多いです。次に、どう変えるのかを考える切り口として「ECRSの原則」が使えます。一般的にE(Eliminate)の効果が一番大きく、S(Simplify)の効果が一番小さいとされているので、まずはE(プロセスをなくせないか)から考えます。

 

施策例

 「書類へのサイン(署名)が多く、業務が煩雑」という課題を解決する施策を2つ紹介します。

A.「業務プロセス」 × E(プロセスをなくせないか)

a.A社では子供が生まれると、上司による人事関連の申請書承認が慣例となっていました。しかし、法的に不要だったため、上司の承認プロセスを削除し、社員は直接人事に申請できるようになりました。

B.「設備・情報システム」 × S(もっとシンプルにできないか)

a.B社では申請の承認を紙でやっていました。しかし、承認者が出張すると承認が滞るため、どこにいても承認してもらえるようワークフロー・システムを導入し、業務スピードが向上しました。

2.出された施策の具体化

出された施策に対し、発散・収束モデルで具体化していきます。前記B社の「ワークフローの導入」の施策で言うと、例えば「どの部門で導入するか?」に関し、3案(営業のみ、営業と経理、全部門)のメリット・デメリットを横並びで比較し、承認者の出張が多く早急に対応が必要な「営業のみ」を選択しました。他に「どの承認プロセスをワークフロー化するか?」に関しても2案(BtoC顧客、BtoB顧客)を比較し、より承認回数が多く早急に対応が必要な「BtoB顧客」との営業プロセスにワークフローを導入することにしました。このように、問いを立てて、発散と収束を繰り返し、施策を具体化していきます。

北米の日系企業では、日本本社に比べて先進的な意見が出やすい土壌が本来あると思いますので、紹介したやり方を参考に施策出しと具体化をしてみて下さい。

次回は4つ目のP、「 Process 施策を実現するための計画」を紹介します。お楽しみに!

 

 

《執筆》
ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ

ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズは在米日系企業の業務改革、IT 戦略立案、DX に必要なコンサルティングサービスを提供しています。あらゆる変革の立ち上げから導入までを円滑に進める方法論とバイリンガルファシリテーションを武器にプロジェクトを成功に導きます。日本では 2015 年以来「働きがいのある会社 Top 10」に選出され続けています。http://www.ctp.com

ティンダル 玲子(てぃんだる・れいこ)
大手コンサルファーム・事業会社、米国大学院留学を経て、2020年ケンブリッジ米国法人入社。大手グローバル製造業のERP導入(SAP 財務会計)、組織再編に伴う経理業務移行支援、クリーンエネルギーに係る新事業戦略立案支援などに従事。米国・ドイツ・日本でプロジェクトを7年経験。

 

 

 

《企業概況ニュース》2023年8月号掲載

 

《連載》コンサルタントが実践する 現地法人変革の進め方

連載① 4+1のPで変革をリードする
連載② Purpose:プロジェクトの意義目的の明文化と浸透
連載③:People:組織横断でOne Team となれるプロジェクトチーム

 

《連載》会社を変える!明日から使えるファシリテーション術

連載① 駐在員が苦しむ「結果が出にくい構造」
連載② 「決まったこと」と「やるべきこと」を確認する
連載③ 終わり方を決めないと始められない
連載④ 会議は4つのPで準備せよ
連載⑤ あなたのチーム、ただの『ヒトの集まり』になってませんか?
連載⑥ チームの成功と成長をもたらす黄色い旗
連載⑦ 対話の相手を尊重した4つの振る舞い

連載⑧ 過去を振り返り、未来へ活かすサンセット
連載⑨ 「理由ある抵抗」と真摯に向き合え

連載⑩ 「隠れた抵抗」を見逃すな
連載11 「隠れた抵抗は「共感と共有」でケアせよ
連載12 Have fun!

You may also like
第五回 Process:施策を実現するための計画
『世界で一番やさしい考え方の教科書』発売
《ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ》
第二回 Purpose:プロジェクトの意義目的の明文化と浸透
連載12 最終回 Have fun!
《ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ》